以前『ためしてガッテン!』で歯の特集が組まれ、
その中で『歯を抜くと、歯を支える骨が溶けてその周りの歯も次々と抜けていく』
という内容が取り上げられていました。
そこで私の見解をお伝えしたいと思います。
番組では、「歯を抜くと必ず骨が溶けて、あっという間にその周りの歯も次々と抜ける」
かのように放送されていましたが、実際にはそんなことはありません。
骨の溶ける量には個人差がありますし、
抜けたところの両隣の歯が倒れてくるのも半々くらいの確率です。
特に奥歯で、抜けてから数年放置しているけれど
今のところ問題ない場合には、支えの歯を大きく削る保険のブリッジを入れるよりも、
そのままにしておいた方が歯が長持ちする可能性が高い、なんていうこともあります。
ところで、歯医者さんはどういう基準で歯を抜くかどうかを決めているのでしょうか?
当院には、「別の歯医者さんで『この歯は残せないので抜歯になります』
と言われたんですが...」
と来院する患者さんが大勢います。
しかし、そのうちのおよそ7割程度の歯が残せています。
先日は、海外在住で現地オーストラリアの2軒の歯科医院でも、
日本に帰国して行った2軒の歯科医院でも
「抜歯しか治療法がありません」と言われた患者さんが来られましたが、
その方の歯も残すことができました。
日本の保険だと、歯を残すための治療は手間暇がかかる割に保険点数が低く、
歯を抜いて入れ歯やブリッジ、できればインプラントを入れた方が儲かります。
保険を経営の柱にしている限り、歯を残すかどうかの判断は
どうしても甘くなりがちになるでしょう。
抜歯には罰則規定がありませんし、
本当はそれが残せる歯だったとしても、抜いてしまえば証拠も残りません。
下の写真の患者さんのように、歯の根しか残っていない残根(ざんこん)状態なら
確実に抜歯です。
ここまで悪ければ、患者さん本人も「仕方ない」と納得されると思います。
しかし、歯は抜いてしまえば終わりです。
歯を支える骨だって、なるべく多く残せる方が良いのは言うまでもありません。
真に患者さん本位の治療を行なうなら、
患者さんの歯を残し、守るのがプロの仕事ではないでしょうか。
番組を見て、全国各地で歯医者さんに駆け込む方が増えたかもしれません。
それによって、本当は残せたはずの歯が歯科医によって安直に削られたり
抜かれてしまっているのではないかと危惧しています。