虫歯で歯が痛くても、激痛をがまんしてしばらく経つと歯の痛みを感じなくなることがあります。
これは、体が痛みに慣れたわけでも、虫歯が治ったわけでもありません...!
歯の内部に細菌が入り込んで、神経が死んでしまったのです。
歯の神経は、歯への栄養補給と細菌からの防御をしてくれているので、
神経が死んでしまうと、細菌に防衛ラインを突破されて
さらに深部に向かって進入が続く上に、歯自体も弱ってもろくなってしまいます。
先日来院された患者様は、右下の大臼歯(6番)の虫歯が進行したことが原因で
真っ二つに割れてしまっていました。
保険の場合、割れた歯を修復するの は手間も時間もかかるので、
「割に合わない」と判断されがちです。抜歯の方がはるかに簡単ですし、
抜歯後の治療(部分入れ歯やブリッジ、インプラントなど)の収益も上がります。
そのようなこともあってか、
「破折なら抜歯」とほとんど自動的に診断されてしまうこともあるようです。
今回のケースでは歯の約3分の1が破折しており、
良心的な歯医者さんであったとしても、まず「この歯は残せない」と
診断すると思います。
「残せない」 破折 という結論ありきではなく、
「どうしたら残せるか」という可能性を丹念に探していくのが
私の治療スタイルです。
今回は非常に難易度の高い症例でしたが、この患者様の歯も無事残すことができました。
ただし、破折した歯を取り除き、残った歯の根の治療、
歯周病菌に侵された歯の根の治療、歯周病に侵された歯ぐきの刺繍外科治療など、患者様にも根気が必要な治療だったと思います。
その後、『ファイバーコア』の土台と『セラミッククラウン』で、
抜歯せずに歯を修復することができましたが、
やはり虫歯は、なるべく進行しないうちに治療するのが最善です。
今回の治療をきっかけに、歯を大切にする習慣をつけていただければ幸甚です。